朽ちる身体 Vol.4 ―― Silk Jasmine(月橘)

Vol.1 Vol.2 Vol3 Vol.4 ***** 「もうおしまいにしよ?」 二週間ぶりに抱いた恋人は、ベッドの上で背を向け、下着を身に付けながらさらっと明るい声でそう言った。 「何、どうしたの? 俺が何かした?」 彼女の腰を取り、こちらに引き寄せようとするが、その…

朽ちる身体 Vol.3 ― Scabiosa(スカビオサ)

Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 ***** 月白の光が、驚いた健一郎さんの顔を照らした。その光に照らされた髪は青というより碧く、美しいなぁなんてぼんやり考えていた。 「自分が何を言っているか、分かってる?」 一呼吸の間をおいて、彼が言葉をのせた。 私はただ…

朽ちる身体 Vol.2 -BLUE MOON(薔薇)

Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 ***** 「大丈夫?」 目黒川沿いにある古いアパート。青い髪の彼が、ドアに背をもたれて仕事帰りの私を待っていた。 私のその問いに答える様子もなく、俯いたままの彼。その長い前髪が顔を隠し、表情が読み取れない。ただ、その下か…

あなたは悪い人だ

「もう、今日こそは物申す!」 とある事務所の経理部。何年かただ真面目に勤務してるだけだったのにもうすっかり周りから「お局」呼ばわりされている私。その方が仕事上やり易いところもあり、怒りも否定もせずそのまま呼ばれることにしている。 そして数分…

Summer Lover

籍だけを入れて式を挙げなかった私たちのために、仲間が開いてくれたサプライズパーティー。プライベートビーチを持つ小さなホテルを貸し切って、なんて豪華なことをいっても、みんなが揃えばただの飲み会になるわけで。夜通しの喧騒のあと、各々の部屋に戻…

BlueなSky

まだ柔らかさの残る青の空、ようやく暖かくなってきた芝生の上、さわさわとそよぐ心地よい風、無邪気に遊ぶ子どもたちの声、向こうの方でバーベキューを楽しむ大人たち。 「ヤバッ! ねえちゃんのおにぎり、うめっ!」 「もう、おおげさだよ。ただのおにぎり…

頭痛が痛い

おでこに冷たいものを感じて目が覚めた。身体が熱くて息が苦しい。ここはどこだ? ああ、マンションで寝ているのか…… 「ごめん、起こした? 冷た過ぎる?」 昔から聞き慣れた、女性にしては低めの声。冷却シートが苦手な俺のために、おでこにあてがわれたの…

朽ちる身体 Vol.1 ― SAKURA(桜)

Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 ――私は、人を愛するという感覚がわからない。 いつも私とは別の人間が俯瞰で見ている感覚。いや、俯瞰で見ている方が私自身であり、動いてる人間はどこか違う。何かが違う。それは人というより動く物体。 だからと言って感情がない…